白めがね大津尚之の書くby佐世保 Vol.13

「プロのスポーツ選手って凄い。」
競輪のお仕事をさせていただいて約8年。
何を今更そんなことを言っているんだ、とお叱りを受けそうなのですが・・・。

「釣るby佐世保」の釣りロケで現役の競輪選手とご一緒させていただくようになり、
一層そう思ったのです。

釣るby佐世保vol.4

釣るby佐世保vol.5

何が凄いって、身体づくりの基本がしっかりしているってこと。
船に乗っている時に、僕なんて少しの揺れが来ただけで立ってられないくらいになってしまうのに、
江口晃正選手(長崎75期)も後田康成選手(長崎75期)も全く動じない。
船の乗り降りもスムーズだし、魚や荷物も軽々と持ち上げてしまう。

そういう姿を間近で見て、
スポーツの世界を本気で目指さなくて良かったなぁ。とつくづく感じたのです。

「ノストラダムスの大予言が当たって地球が滅びるんだから、勉強なんてしなくて良いんだよ。」
なんて思っていた1999年夏。
同級生に高校生になったらボクシングをしないかと誘われた。
当時の僕はというと身長163センチ、体重45キロ。
バスケットボール部に所属をしていたものの、「大津は声が大きい。」という理由だけで
副キャプテンに任命され、試合ではいつも野次要員としてベンチを温めている始末。
シュートを打てば届かない、走るとすぐに息が上がる。
そんな僕がボクシング部?
冗談じゃないと首を横に振ると、彼は神のような一言を言い放ったんです。

「ボクシングって、イケてない奴が始めると、めちゃくちゃ強くなれるらしいで。」

そう言えば、その時に読んでいたボクシングの漫画も
いじめられっ子の主人公がメキメキと強くなっていく、という物語だった。

ボクシングをすると強くなれる。
人生が変わる。
彼女が出来る。

帰宅後、お風呂場で自分の身体を見てみると、どことなくボクサー体型のように見えてきた。
何気なくパンチを打つマネをしたところ、風を切り裂くような拳の音が。
部屋に戻り、蛍光灯のスイッチの紐を殴ってみる。
当たる。
こうなると気分は完全にボクサーだ。

高校デビューを信じてやまない大津少年は、ボクシング部への入部を夢見て筋トレに筋トレを重ねた。

そして迎えた翌4月。
さすがは拳闘部。
全国大会出場常連校なので、見るからに強そうな人たちが多い。
しかし、見た目は関係ない。
ここから先は拳で語り合おうぜ。

サンドバッグを打ちながら、そんなことを思っていた。

すると、先輩が・・・

「大津、大丈夫じゃ。サンドバッグは壊れんけぇ、思い切り殴ってみぃや。」

僕のサンドバッグは1ミリも動いてなかったのだ。

「・・・本気で殴ってます・・・」
「・・・えっ!?」
あれほどまでに他人が(しまった。)という表情をするのを、僕は後にも先にも見たことがない。

その後、辞めますという一言がどうしても言い出せずに練習試合を迎えた。
実践では大丈夫。
「くそー、殴られた。こいつ、思いのほかパンチが重いな。
右ストレートが来たら、左フックのカウンターをお見舞いしてやるぜ。」
漫画の世界では、こんなやり取りが繰り広げられているのに、
そんなこと考える暇もなくボコボコに殴られて負けてしまった。

8月にさせぼ競輪場で行われたミッドナイト競輪では
元プロボクサーで東洋太平洋2位だった鮫島康治選手(大阪111期)が優勝した。

「プロのスポーツ選手って凄い。」

やっぱりそう思う。